漫画「波よ聞いてくれ」(沙村広明)を読んでみた感想・レビュー

 

波よ聞いてくれとは

波よ聞いてくれ」は漫画家 沙村広明さんが描くヒューマンストーリー漫画です。

2014年から月刊アフタヌーンで連載中。ラジオパーソナリティーといった漫画としては稀有な題材取り扱っています。
J-WAVEとコラボレーションしてラジオドラマ化、「この漫画がすごい」、「このマンガを読め!」など数々の賞にノミネートされ3位~6位の上位入賞が常連になっている注目度の高い作品です。

 

波よ聞いてくれネタバレなし感想

代表作「無限の住人」が有名な沙村広明(さむらひろあき)さんが描くヒューマンストーリー。

木村拓哉さんが実写映画化したことでも話題になった「無限の住人」では主人公が不死身といった特長をいかしたアクションや陰鬱なストーリーが特長でしたが、本作はガラリと作風が違った印象です。
無限の住人のヒロインであった「乙橘槇絵(おとたちばなまきえ)」と容姿が似ている「城華マキエ(たちばなまきえ)」というキャラが登場するなど前作ファンの方に方も「おっ」とうなる遊び心があるので見て欲しいです。

本作最大の魅力は主人公”鼓田ミナレ”が放つ独特な表現・言い回しだと思います。

仲がよい友人同志が交わす面白いやりとりを高レベルに消化させた様な、思わず「ふふっ」と微笑んでしまう表現がつまってます。

無限の住人時代から独特なギャグセンスは感じていましたが、重厚なストーリーへの味付けではなくそこで全面的に勝負できる能力があったからこそ挑戦できたジャンルなのだと思います。
素直に面白いです。

ラジオパーソナリティーというジャンルを題材にした漫画も珍しいですし、今後が楽しみな漫画の一つです。

 

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波よ聞いてくれネタバレあり感想 ※以降ネタバレあり

破天荒な性格の女性主人公”鼓田ミナレ”がラジオパーソナリティーとして成長(?)していくヒューマンストーリー。

正直ストーリーだけ考えると「ラジオ業界の深掘り」という点以外ではあまり魅力を感じません。

…が、何故でしょう。読み進めて行く内に波よ聞いてくれの世界観にドップリつかっていきました。

上記にあるように主人公は破天荒でトラブルメーカーながらも非常に頭の回転が早く積極的でアドリブも効く設定です。
そんなところを見初められてラジオパーソナリティーとしての道を進んで行くことになるのですが、サクセスストーリーというよりも鼓田ミナレの発言や周囲とのやりとりが秀逸です。※実際に既巻ではサクセスしませんし

鼓田ミナレの破天荒な発言の一部

光雄!お前は地の果てまでも追い詰めて殺す!!

引用:波よ聞いてくれKindle版1巻より

 

さあ…酸素を吸って二酸化炭素を吐いてるんじゃないの?

引用:波よ聞いてくれKindle版2巻より

 

毒薬もねえのかよこの家は!

引用:波よ聞いてくれKindle版1巻より

※「波よ聞いてくれの名言・迷言」にも詳細記載
毒しか吐いてません。

面白さの本質がストーリーや絵にないので(これらが悪いわけではありません)ネタバレありきの感想として表現するのが難しい作品。

恐らく(あくまで個人の予想ですが)実写化したら非常にチープで面白みのない作品になってしまうのではないでしょうか。
漫画だからこそ、読み手がやりとりの間や足りない箇所を保管する、まさしくラジオの様な楽しみ方ができる漫画だと思っています。

 

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波よ聞いてくれの名言・迷言

 

光雄!お前は地の果てまでも追い詰めて殺す!!【鼓田ミナレ】

引用:波よ聞いてくれKindle版1巻より

嵌められたような形で生放送中のラジオで元カレへの思いの丈を伝える場で口走った一言。
直前まで「あなたに対して遺恨はありません」的な流れだったぶんインパクト十分です。

 

さあ…酸素を吸って二酸化炭素を吐いてるんじゃないの?【鼓田ミナレ】

引用:波よ聞いてくれKindle版2巻より

入院中のバイト先の店長に対して陰口(?)
人間性に問題のある店長ではありますが、これなら直接的な悪態をつかれた方が傷つかずにすみそう。

 

毒薬もねえのかよこの家は!【鼓田ミナレ】

引用:波よ聞いてくれKindle版2巻より

元カレの光雄に復讐するために再度会うことに決めたが、復讐を忘れて普通に楽しんでしまった挙句元カレの家までホイホイついてきてしまっている自分の状況に逆ギレしながらの一言。

 

水島新司先生の…アレよ……えーと…野球の漫画よ【ミナレの先輩】

引用:波よ聞いてくれKindle版2巻より

かっこいいセリフを吐き引用元を聞かれた際の返答。ミナレの「どれすか!」は読者の代弁。

 

そう…貴女は先輩にやっすいやっすいカップ酒を飲ませる人なのね【茅代 まどか】

引用:波よ聞いてくれKindle版3巻より

ノンアルコールビールと安酒どちらを飲むかミナレに選択させ「車なので」とノンアルコールを選ばれた際に発した言葉。
恐らく正解がない。

 

波よ聞いてくれのあらすじ

彼氏と別れたばかりの「鼓田ミナレ」は酒を飲み近くの客に盛大に管を巻き記憶がなくなるほどに酔いつぶれていた。

傷は残れど働かなければならず勤務店スープカレー店「ヴォイジャー」で働いていると聞き慣れた声がラジオから聞こえてきた。
それは昨晩初対面の人物にぶちまけた元彼への文句の録音であった。

急ぎ放送元であるMRSラジオに向かいスタジオに乗り込むと、一緒に飲んでいた客「麻藤 兼嗣(まとう かねつぐ)」が待ち構えていた。
放送を止めようとするが、止め方もわからず「止めたら放送事故になる」という麻藤の言葉にわけもわからぬまま思いの丈を生放送にぶつける。

全てが終わった後に麻藤に詰め寄るが麻藤の手には「録音を使われても文句は言いません」といった旨の念書であった。

翌日、無断で持ち場を離れたことによりヴォイジャーの店長よりキツイ叱責を受け働き始めると、多くの客から「ラジオで喋ってましたよね?」と声をかけられる。

原因はラジオが流れ始めた際の「鼓田ミナレ」の狼狽ぶりが動画サイトに上げられたことだが、これも麻藤の策略。

「鼓田ミナレ」の声やしゃべりにセンスを感じた麻藤が周りも巻き込みミナレをラジオパーソナリティーとして起用しようとしていたのだ。

店長と馬が合わずヴォイジャーの解雇が決まってしまったミナレはお金のため重い足を引きずりMRSラジオに出向く。

そこで麻藤に「ラジオで話していかないか?」と提案される。
前回放送の反応と異常な滑舌の良さ、他諸々だとういうが、本当の理由は煙に巻いているような感も。
なし崩し的にラジオの世界に足を突っ込んでいくミナレであった。

そうこうしているうちにとうとうボイジャーを解雇になってしまったミナレ。
家賃すらまともに払えなくなってしまうミナレは同僚の中原 忠也(なかはら ちゅうや)とやけ酒をあおる。
ミナレに好意をよせる中原は「うちに住みますか?」と提案するが華麗にスルーされる。

酩酊状態で自宅につくと知らない男が。
反射的に撃退し警察に通報するが、実は自宅だと思って上がり込んでいた部屋が1つ下の階の他人の家であった。
今まで何度も同じ様なことをしていたミナレは親切な階下の住人に部屋まで運んでもらっていたのだ。
警察にも階下の住人にも謝りたおすことになる。

居場所が狭まっていくミナレはラジオの仕事を受けることにする。

パーソナリティーを引き受けると決めた早々に冠番組を持つように麻藤から進められるが、
そうそううまい話があるわけもなく深夜の時間帯でスポンサーもこれから探すような枠であった。

家賃が払えなくなるミナレはMRSラジオの倉庫に住み込もうと考えていたが、MRSラジオのADを務める「南波 瑞穂(なんば みずほ)」の自宅に暫く泊めてもらえることになった。

ラジオだけで生計をたたていけると考えていないミナレは、副業(?)とスポンサーを独自で探すことにする。

ミナレの相談相手として度々登場する中原は店長に謝ってボイジャーに復帰することを進める。
あまり乗り気ではないミナレであったが、中原の恋心もこもった熱い説得によって一緒に店長に謝りに行くことを決意するが、タイミング良く(悪く)交通事故にあった店長のおかげで人で不足になったボイジャーでなし崩し的に復帰することになった。

ボイジャーに復帰することになったミナレは実質中原と2人きりで働くこととなる。
ミナレに好意を抱いている中原はアプローチをつづけるが相変わらずのらりくらりと躱すミナレ。
そこに店長を入院送りにした事故の加害者の妹を名乗る「城華(たちばな)マキエ」が訪ねてくる。

お詫びとして無休でボイジャーで働かせてほしいというマキエに半信半疑な二人であったが、様々な仕事をそつなくこなすマキエは徐々に重要な戦力になっていく。

それどころかミナレが担当する仕事まで上手くこなしてしまうので何ともモヤモヤにとらわれる。
そして、事情があり家に帰れないというマキエに対し「家にくれば?」と誘う中原を目撃してしまう。

恋人ではないがストレートに好意を伝えてきた裏切りとも言えるような中原の好意に心がささくれるミナレのもとに冠番組スタートの連絡が届く。

麻藤との打ち合わせミナレの冠番組は「固定企画やフォーマットをつくらない番組」「ノースポンサー枠での放送」「ミナレの声を玩具して遊んでみたい」という番組の趣旨を聞かされる。

そして1回目の放送は虚構の出来事を実況風に放送する「仮想実況」。
”自分を裏切った男をたった今殺してきた女”を演じる。
リスナーへの趣旨の説明もなしにスタートするので放送事故を装う形での実験的番組となる。

アドリブ箇所だらけの台本に不安を覚えながらも放送時間直前での麻藤とのやりとりでいつもの自身を取り戻したミナレは見事仮想実況を演じきった。
リスナーの中にミナレの元恋人「光雄」が女に殺されそうになっているがラジオの内容によって思い直し救われるような描写も入る。

翌日ネットでのラジオの反応やボイジャーの客からの声かけなどを受け、まんざらでもなくなっているミナレ。
これからラジオ一本でやっていく発言もでたが1本収録あたりのギャラを聞きすぐに撤回する。

そんな少しだけ変わった日常に元彼「光雄」からのメールが届く。

光雄からの連絡に対しミナレがおこした反応は「復讐」であった。
貸した金を借りパクした男に対しボイスレコーダーを使い陥れ、それをラジオで放送しようと計画していた。
当然のように麻藤に却下をうけるがプロデューサーとして別の提案を受ける。
こうして腹に一物をもち光雄と会うことになったミナレ。

また中原はマキエを家に泊めているが、中原の姉と甥が同居しており下心があってのものではなかった(ミナレはまだ知らず)
そこでマキエは親と死に別れ兄から虐待レベルでの過保護を受けているおり、現在はとても充実していると話す。

久しぶりにあった光雄は一度は惚れた魅力的なままだった。
さらには借りパクされていた50万円の半額を返され今までしてこなかった割り勘をされるなど態度に関しては更生の後がみえる。

目的を見失わないようにしながらも普通にデートとして楽しんだミナレは光雄の部屋を訪れる。

光雄のペースに流されながら徐々に良くなっていく雰囲気だが部屋に女を連れ込んだ形跡を目ざとく見つけるミナレ。
残りの25万を返済するために他の女を泣かされてたまるかと光雄にキツイ体罰と捨て台詞を捨てて部屋を後にする。

光雄との一連のやりとりをおさめたボイスレコーダーを麻藤に渡した後日、次のオンエアが用意した音声データを光雄の声に変換し進行するラジオドラマ「埋葬」であることを告げられる。
これは現状の「舌の回る一般女性」というスタンスのミナレを埋葬し次のステップへ進めようという区切りの放送でもあった。

シナリオ自体は殺害した元彼を樹海に埋めている途中に彼がゾンビのように蘇り、はずみで樹海に住まう地底人と語らうというぶっ飛んだ内容ながら見事に演じきるミナレ。

2回の放送を終えたミナレは麻藤から次回の企画は自ら考えるように伝えられる。
ボイジャーの同僚、中原やマキエ、同居させてもらっている瑞穂にインスピレーションをもらいながら企画を考える。

その結果、ミナレが元住んでいたアパートの1階に住んでいる住人「沖進次」へ突撃取材を行うことになった。

元々素行が怪しいことと、本人からMRSラジオに対し「自分は呪われている助けて欲しい」との依頼が来たからである。
オカルト路線を嫌がりながらもこれといったネタもないため突撃取材を敢行するミナレと同行者瑞穂。

話を聞くうちに沖進次と生き別れになった恋人の呪いが部屋に降り掛かっているという旨の話だった。
まともな状況ではない沖進次の話であったが、天井から悪臭がする液体が垂れ落ちてくるという何ともオカルトな状態に。

仕方なくミナレが天井裏にあがり調査していると悪臭の元がゴミ袋にツメられた肉片であることが判明する。
こうして部屋の住人沖進次は札幌北警察に通報し連行された。

後日、麻藤はこれが事件になればMRSラジオの独占スクープとして扱えると皮算用を行うが、札幌北警察の事情徴収から帰ってきたミナレの表情は暗いものだった。

更に後日、沖進次を同行し第三回目の放送が始まる。
その中でミナレが告白した内容は驚くべく、人の死体だと思っていたのは上階の住人(ミナレ)が床下に放置していた大量のマトン肉であり全ての元凶がミナレにあることを激白した。

巻き込まれた形の沖進次への懺悔は、放送内で生き別れた恋人へのメッセージを届けるとう言うものであった。
斯くして正式に始まったミナレの看板番組「波よ聞いてくれ」は懺悔からスタートするという形に。

新しく住む部屋が決まっていたミナレであったが、悪臭のため住居不能になった沖進次部屋のクリーニング完了まで部屋を貸すこととなり、その間瑞穂に出戻りすることとなる、その夜瑞穂がMRSラジオに入った理由が語られる。
MRSラジオの放送作家である「久連子克三(くれこかつみ)」の講義を高校で聞いたことが起源であり、それいらい久連子にあこがれている様子が伺える瑞穂。

後日、ミナレはMRSラジオの花形番組のパーソナリティである「茅代まどか(ちしろまどか)」に呼び出される。
深夜の公園に呼び出された上に茅代の特殊な性格を知っているミナレは身構えつつ誘いに乗る。

安いカップ酒を煽りつつ取り留めのない話をしながら茅代はミナレに”バレンタインラジオ”の企画書を渡す。
バレンタインラジオはMRSだけではなく系列局を巻き込んだ1大イベントで各局ごとに人気の話し手を4人選出して行う公開イベントだという。
茅代がどのような意図でミナレにこの企画を渡したかは定かではないが巻き込まれる予感。
そのまま酒を煽り続ける茅代は酔いつぶれ結局ミナレが来るまで送っていくことに。
茅代を送り届けた後に瑞穂と飲み直すミナレ。
そこで瑞穂は2年以内にチーフディレクターになることを決意表明。
メインDJミナレ、構成作家久連子、を使い3人で仕事をしたいと語る。、

一方、ボイジャーでは中原とマキエの元に退院してきた店長と事故の加害者であるマキエの兄が訪ねてきていた。
病的にマキエに依存する兄は中原に絡むが中原の姉の助け船もはいり、その場はなんとか上手く治まったかに見える。
そんな状況から逃げるためかマキエは「ボイジャー以外でやってみたいことがある」と語る。

次回放送の打ち合わせをするミナレだが、自ら企画を考えるという壁にぶつかり良い案がでずに打ち合わせと次回放送までに時間が近づいていく。

ボイジャーでは店長が復帰し店内の雰囲気は最悪に。
元々期間限定での復職だったミナレだが中原の助けもありなんとか暫くボイジャーに籍を置くことを許される。
だが、交換条件として店長の身内が作成したDJサウンドをラジオの出囃子で使うことを要求するのであった。

結局放送までに良い案がでずに、親子喧嘩を全国の電波にのせるという醜態をさらす状況まで追い込まれるミナレ。
そこに放送作家の久連子が現れ、収録時間までに今までの案をあわせた急増の台本を考えてくれた。
久連子いわくMRSラジオを離れることとなる選別だという。

その内容は「熊を眼の前にしてリスナーからの投稿を紹介する」という放送形式。
ミナレの力の入ったアドリブも混ぜ入れ見事収録を終えるが、出囃子で使っていた店長から預かったBGMにボイジャーの宣伝を混ぜ込む”サブリミナル”が使われていることがわかり、すべて撮り直しする羽目となった。

 

久連子に憧れMRSラジオに入った瑞穂は久連子の退社の決意を知って放心気味。
本格的に小説家として賞を目指す姿勢に引き止めることもできずいる瑞穂の背中を押し久連子と話す機械をつくらせるミナレ。
結果瑞穂が小説の取材手配を手伝うこととなる。

さらに、その状況を面白がった麻藤は”瑞穂とミナレに久連子の取材旅行に同行し旅レポを録音しろ”と命ずる。

一方HCBラジオで面接を受けているようなマキエ…。

※以上4巻までのあらすじ

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